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お話の感想や解釈

National Theatre Live: Yerma

 

 

昨日やっと見に行きました。

National Theatre LiveのYerma

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National theatre liveを観に行ったのは2回目なのですが、今回はYoung Vic Theatreで公演された演劇だったみたいですね。

(National Theatre Liveが何かは前回の記事を参照してください)

Yermaの原作はスペインの劇作家、ロルカによって1934年に初めて演じられた劇の脚本です。

 

あらすじとしては、

妊活に励む主人公の女性が夫とはすれ違うわ、赤ちゃんはなかなかできないわ、でも姉には赤ちゃんができるわ、でフラストレーションが溜まって精神をおかしくしちゃう。

っていう話です。ざっっっくり言えば。

 

1934年初演の劇を、現代風に書き換えて訳したので結構見やすく、コミカルな部分もありましたが、このような妊活に悩む女性を中心として描く劇はとても新鮮でした。

主人公Yermaは結局この劇においては精神的に追い詰められて自殺するのですが、赤ちゃんが欲しいけどできないフラストレーションだけで追い込まれただけじゃなく、さまざまな状況が引き金となっていました。

例えば、

彼女が昔中絶した赤ちゃんの父であり、元彼である彼の結婚とその妻の妊娠。

母親の自分に対しての軽薄さ。

妊娠を望んでいない姉は妊娠できるのに、望んでる自分はできない苛立ち。

夫の妊活への関心の薄さや、彼の度重なる出張。

全ての小さな引っ掛かりが結局は大きな重石となって、彼女の精神を蝕んでいったのでしょう。

 

とても日常的な劇だからこそ、この劇の演出の気味の悪さが拍車をかけて現実味を帯びさせてました。

本当にばっさり言うと

ひたすらに気味が悪い。

劇の演出もそうだし、リアルな演技や、場面の変換にかかる音楽が主人公の精神状態に合わせて美しい音楽からけたたましい音程もないただの音に変わっていく様や、

劇の内容自体、妊活に悩む女性の物語というだけあって、現実にもたくさんあるようなリアルさだったからこそ、この劇の気味の悪さが現実を侵してくる感覚がしてひたすら後半は気持ち悪いわ、冷や汗かくわで怖かったです。

 

まあここまで言ってなんだとは思いますが、面白かったです。楽しいと思うだけがその作品が面白いと思う判断材料にはなりませんからね。

この劇は興味深い、考えさせられる劇としてとても面白かったです。鬼気迫る感覚もやはり劇の完成度がそれほど高かったからでしょう。

おすすめです。